農林水産省承認機器導入

血液透析(人工透析)
先進的な腎不全治療を提供

当院では、小動物用血液透析装置NCU-Aを導入し、
急性腎障害や慢性腎臓病の犬猫に対して、
欧米文献に基づいた科学的根拠のある透析治療を行っています。

IRIS 2024
ガイドライン準拠
猫にも比較的
安全に使用可能
除水誤差ZERO
の安全性

腎臓病について

Kidney Disease Overview

急性腎障害(AKI)

数時間から数日の間に急激に腎機能が低下する状態です。中毒、感染症(レプトスピラ症など)、脱水、尿路閉塞などが原因となります。

適切な治療により回復の可能性があります。

慢性腎臓病(CKD)

数ヶ月から数年かけて徐々に腎機能が低下する進行性の疾患です。特に高齢の猫に多く見られ、10歳以上の猫の20〜50%が罹患します。

IRISステージング(1〜4)により重症度を評価します。

血液透析の役割

国際腎臓利益協会(IRIS)2024年ガイドラインに基づき、重度の急性腎障害や内科的管理が困難なCKDに対して血液透析を実施します。

生命を救い、腎機能回復の機会を提供します。

血液透析(IHD)とは

Intermittent Hemodialysis

血液透析は、機能が低下した腎臓の代わりに、体外で血液をろ過して老廃物や余分な水分を除去する治療法です。

間欠的血液透析(IHD: Intermittent Hemodialysis)は、重度の急性腎障害(AKI)や、内科的治療でコントロールできない慢性腎臓病(CKD)に対する標準的な治療法として、IRIS(国際腎臓利益協会)2024年コンセンサスガイドラインで推奨されています。

血液透析の仕組み

1

血液を体外へ

動物の血管にカテーテルを留置し、血液ポンプで体外循環させます。

2

ダイアライザーで浄化

透析器(人工腎臓)内で、半透膜を介して老廃物や余分な電解質、水分を除去します。

3

浄化された血液を体内へ

きれいになった血液を体内に戻します。この過程を数時間継続します。

期待される効果

  • 尿毒症物質の効果的な除去
  • 電解質異常(高カリウム血症など)の迅速な補正
  • 過剰な体液の除去
  • 酸塩基平衡の改善
  • 腎機能回復までの時間的猶予の確保

主な適応症例

Indications for Hemodialysis

急性腎障害(AKI)

IRIS Grade IV〜Vの重度AKI、特に乏尿・無尿を呈する症例

文献データ: 犬の退院時生存率53%、猫50%(Eatroff et al. 2012, JAVMA)

中毒・薬物過剰摂取

エチレングリコール、ブドウ・レーズン、ユリ中毒、NSAIDs過剰投与など

特徴: 早期介入により透析可能な毒素を速やかに除去

レプトスピラ症

レプトスピラ感染による急性腎障害および肝障害

文献データ: IHD併用で生存率86%(Retrospective evaluation 2024, JVIM)

電解質異常

生命を脅かす高カリウム血症、重度の代謝性アシドーシス

適応: 内科的治療に反応しない場合

体液過剰

肺水腫、胸水、腹水など、利尿薬に反応しない体液貯留

効果: 精密な除水コントロールが可能

慢性腎臓病の急性増悪

急性-慢性腎障害(acute-on-chronic)、尿毒症危機

目標: 内科的管理の限界時に症状緩和とQOL向上

猫の慢性腎臓病(CKD)と血液透析

Feline Chronic Kidney Disease

20-50%
10歳以上の猫がCKD罹患
Cornell大学 獣医学部データ
15
以上では80%以上が罹患
高齢猫の最大の死因

猫の慢性腎臓病(CKD)は進行性の疾患であり、完治は困難ですが、適切な管理により生活の質(QOL)を維持し、生存期間を延長できる可能性があります。

日本国内では、欧米と比較して慢性腎不全に対する血液透析の使用例が比較的多く報告されています。当院で導入しているNCU-Aは、猫に対しても比較的安全に使用できる設計となっています。

IRISステージングとCKD猫の予後

Boyd et al. (2008) による211症例の大規模研究では、IRISステージと生存期間の明確な関連が示されています。

IRISステージ
血清クレアチニン
中央生存期間
Stage IIb
2.0-2.8 mg/dL
1,151日(約3.2年)
Stage III
2.9-5.0 mg/dL
778日(約2.1年)
Stage IV
> 5.0 mg/dL
103日(約3.4ヶ月)

Boyd LM, et al. J Vet Intern Med. 2008;22(5):1111-1117

CKD猫のQOL(生活の質)

Lorbach et al. (2025) の最新研究により、CKD猫は健康な猫と比較して、活力・快適さ・精神的健康のすべてで有意にQOLが低下することが明らかになっています。

食欲不振

正常な食欲を持つ猫と比較してQOLスコアが有意に低い

貧血

ヘマトクリット値の低下に関連してQOL低下

多剤投与

5〜7種類の薬剤服用でQOL全項目が低下

筋肉量減少

中等度〜重度の筋萎縮でQOL低下

IRIS 2024ガイドライン: CKDへの透析適応

慢性血液透析(Chronic hemodialysis)は動物において一般的ではありませんが、IRIS Stage 4のCKDにおいて、以下の条件を満たす場合に考慮されます:

  • 包括的かつ適切な内科的管理(栄養チューブの使用を含む)を徹底しても、臨床症状(体重減少、食欲不振、嘔吐など)や臨床病理学的異常(酸塩基平衡障害、電解質異常、高リン血症など)を効果的にコントロールできない
  • 他のあらゆる手段が不十分であると判断された場合
  • 動物が大幅に代償不全に陥る前(悪液質になる前)に介入を検討する

92%の専門家が同意(IRIS Working Group 2024)

猫のCKDと透析に関する文献

Applications and outcome of hemodialysis in cats

Langston CE, Cowgill LD, Spano JA.

J Vet Intern Med. 1997;11(6):348-355

主要な知見: 猫29症例の検討。急性腎不全(ARF)の猫15頭中9頭(60%)が透析後に回復し、透析を必要としない状態まで回復。慢性腎不全(CRF)の猫でも実施例あり。

慢性透析の考慮事項

継続的治療の必要性

慢性透析は週に数回、生涯にわたって継続する必要があります

専門的判断

獣医師による総合的な評価と、飼い主様との十分な相談が必要です

医療費

長期的な治療計画と費用についての現実的な検討が重要です

当院では、個々の症例に応じた最適な治療方針をご提案いたします。まずはご相談ください。

治療の流れ

Treatment Process

01

診察・評価

詳細な身体検査、血液検査、画像診断などを実施し、透析の適応を判断します。飼い主様に治療計画、リスク、費用について詳しくご説明します。

02

カテーテル留置

全身麻酔下で、頸静脈または大腿静脈に透析用カテーテルを留置します。カテーテルは透析終了後も一定期間留置する場合があります。

03

透析セッション

NCU-A血液透析装置を用いて、3〜6時間の透析を実施します。動物の状態を常時モニタリングし、安全に治療を行います。

04

経過観察

透析中および透析後の血液検査、電解質バランス、尿量などを継続的にモニタリングします。必要に応じて複数回の透析を実施します。

05

入院管理

透析治療期間中は入院が必要です。24時間体制で動物の状態を管理し、補液療法や薬物療法を並行して実施します。

06

退院・フォローアップ

腎機能の回復や症状の改善を確認後、退院となります。退院後も定期的な検査とフォローアップが必要です。慢性透析の場合は通院計画を立てます。

科学的根拠(エビデンス)

Evidence-Based Medicine

当院の血液透析治療は、国際的に認められた査読付き文献に基づいています。以下に主要な研究論文をご紹介します。

国際ガイドライン

IRIS 2024 コンセンサスガイドライン

Segev G, Cowgill LD, Jepson R, et al.

The Veterinary Journal. 2024;305:106092

主要な知見

国際腎臓利益協会(IRIS)による犬猫の間欠的血液透析に関する60のコンセンサス声明。急性腎障害および慢性腎臓病Stage 4への適応基準、透析処方、安全管理の標準化を提供。

長期予後研究

AKI犬猫の長期予後(135症例)

Eatroff AE, Langston CE, Chalhoub S, et al.

J Am Vet Med Assoc. 2012;241(11):1471-1478

主要な知見

犬93頭、猫42頭のAKIに対するIHD治療の長期予後を調査。退院時生存率は犬53%、猫50%。退院後30日生存率は犬42%、猫48%。ヒト患者と同様の生存率を示し、退院できた動物は長期生存の可能性が高い。

レプトスピラ症

レプトスピラ症AKI犬への透析治療(22症例)

Retrospective evaluation

J Vet Intern Med. 2024

主要な知見

レプトスピラ症による急性腎障害(AKI-L)の犬22頭に対する腎代替療法(RRT)の後方視的研究。重症度に関わらず、IHD/CRRTを受けた犬の生存率は86%と良好。早期介入の重要性を示唆。

CRRT研究

重度AKI犬へのCRRT安全性・有効性

Continuous renal replacement therapy study

J Am Vet Med Assoc. 2022;261(1)

主要な知見

重度急性腎障害の犬に対する持続的腎代替療法(CRRT)が安全かつ有効であることを実証。処方された透析量により効果を最大化でき、段階的な尿素低減により安全性が確保される。

猫CKD・QOL

CKD猫のQOL評価研究

Lorbach SK, Bright JM, et al.

J Feline Med Surg. 2025

主要な知見

CKD猫は健康な猫と比較して活力・快適さ・精神的健康が有意に低下。IRISステージが高いほどQOL低下が顕著。貧血、食欲不振、便秘、多剤投与などが修正可能なQOL低下因子として特定された。

猫CKD予後

CKD猫の生存研究(211症例)

Boyd LM, Langston C, et al.

J Vet Intern Med. 2008;22(5):1111-1117

主要な知見

CKD猫211頭の長期予後調査。IRISステージIIbの中央生存期間は1,151日、Stage IIIは778日、Stage IVは103日。診断時のIRISステージは予後の強力な予測因子。

猫への透析応用

猫への血液透析応用と予後(29症例)

Langston CE, Cowgill LD, Spano JA.

J Vet Intern Med. 1997;11(6):348-355

主要な知見

猫29症例への血液透析実施。急性腎不全(ARF)の猫15頭中9頭(60%)が透析なしで生存できるまで回復。慢性腎不全(CRF)の猫でも実施。猫において血液透析は技術的に実行可能で、尿毒症の生化学的異常を効果的にコントロール。

当院では、これらの科学的根拠に基づき、個々の症例に最適な治療方針を提案いたします。

リスク・副作用

Risks and Adverse Events

血液透析は高度な医療技術であり、適切な管理下で実施されますが、以下のようなリスクや副作用が生じる可能性があります。治療開始前に獣医師が詳しくご説明いたします。

循環器系

  • 低血圧(血圧低下)
  • 不整脈
  • 心不全の悪化
  • 血栓形成

血液関連

  • 貧血の進行
  • 出血傾向
  • 回路内での凝固
  • 電解質異常(低カリウム血症、低カルシウム血症など)

神経系

  • 透析不均衡症候群(急激な代謝変化による脳浮腫)
  • 痙攣
  • 意識レベルの変化

感染症

  • カテーテル関連感染
  • 敗血症
  • 局所感染

手技関連

  • カテーテル留置時の血管損傷
  • 気胸(まれ)
  • カテーテルの位置異常
  • 透析回路のトラブル

当院でのリスク管理

専門的監視

透析中は獣医師および訓練を受けたスタッフが常時モニタリング

バイタルサイン監視

血圧、心拍数、酸素飽和度などを継続的に測定

定期的検査

透析前後の血液検査により電解質バランスを厳密に管理

NCU-A安全装置

除水誤差ZERO、気泡検出、圧力監視など多重安全機構

重要な注意事項

  • すべての動物に適応できるわけではありません。事前の詳細な検査と評価が必要です。
  • 基礎疾患の重症度によっては、透析を行っても救命できない場合があります。
  • 透析は腎機能を回復させる治療ではなく、腎臓の代わりに老廃物を除去する対症療法です。
  • 急性腎障害の場合、腎機能が回復するまで複数回の透析が必要になる場合があります。
  • 慢性腎臓病Stage 4では、生涯にわたる継続的な透析が必要になる可能性があります。
  • 治療には高度な専門知識と設備が必要であり、医療費が高額になる場合があります。

導入機器:NCU-A

小動物血液透析装置

農林水産省承認機器

当院では、リーフインターナショナル株式会社製の小動物血液透析装置「NCU-A」を導入しています。NCU-Aは農林水産省承認の動物専用血液透析装置であり、2008年以降、国内で約40台が導入されている実績ある機器です。

NCU-Aの特徴

世界初の技術

動物用シングルパス方式を世界で初めて採用。透析液を本体内で調整し、還流後はそのまま排水する効率的なシステムです。

除水誤差ZERO

VCS(密閉容量差制御方式)により、除水誤差をゼロに抑制。体の小さな猫や小型犬でも安全に体液管理が可能です。

低流量対応

血液ポンプ流量2〜60mL/minに対応。小さな猫(3kg程度)から大型犬まで幅広く治療可能です。

自動洗浄機能

自動洗浄プログラムを搭載し、日常のメンテナンスを簡易化。清潔な透析環境を維持します。

多重安全装置

気泡検出、静脈圧監視、透析液濃度・温度監視、TMP(膜間圧較差)監視など、多数の安全装置を装備。

直感的操作

TFTカラー液晶タッチパネルにより、パラメータ設定や監視が容易。専門的な透析処方を正確に実行します。

主要仕様

除水制御方式
VCSによる密閉容量差制御方式
設定範囲: 0.00, 2.0〜80mL/min
精度: ±30mL/h(2.0〜80mL/min時)
血液ポンプ流量
2〜60mL/min(φ3.1×φ5.0チューブ時)
透析液流量
定格500mL/min(範囲300〜500mL/min)
温度調節範囲
32.0℃〜40.0℃
安全装置
目標除水量、気泡検出、静脈圧、液圧、TMP、濃度、温度、密閉系漏れチェック、給水不足、漏血、システム異常、除水リミッター
消毒方式
薬液消毒(次亜塩素酸ナトリウム1,000ppm・1時間、または300ppm以下で6〜24時間付け置き)
寸法・重量
250mm(W) × 390mm(D) × 1230mm(H) / 約70kg

猫に対する安全性

NCU-Aが猫に対しても比較的安全に使用できる理由:

  • 低流量対応(2mL/min〜)により、体重3kg程度の小さな猫でも適切な血液流量で透析可能
  • 除水誤差ZEROにより、体液量の少ない猫でも過剰除水のリスクを最小化
  • 動物専用設計で、ヒト用機器では困難だった小動物への精密な透析処方が可能
  • シングルパス方式により、透析液の清潔性が保たれ、感染リスクが低減
  • 多重安全装置が小さな異常も検知し、即座に警報・停止

専門組織によるサポート

2010年8月、日本小動物血液透析協会が設立されました。同協会では、実践的セミナーや透析に関する情報を定期的に提供しており、NCU-A導入施設間での技術向上と情報共有が行われています。当院もこのネットワークの一員として、最新の知見を取り入れた治療を提供しています。

国内実績

40
2008年以降の国内販売実績
15
以上の臨床使用実績

お問い合わせ

Contact Information

エルムス動物医療センター
ららぽーと柏の葉院

院長:早田 明 獣医師

電話番号

04-7137-0577

住所

〒277-0871
千葉県柏市若柴175
ららぽーと柏の葉 本館1階1411号

診療時間

午前:10:00〜12:00
午後:15:00〜20:00
(最終受付 19:30)
手術・検査:12:00〜15:00

休診日

年末年始を除き無休
(ららぽーと柏の葉の休館日に準ずる)

アクセス

つくばエクスプレス
「柏の葉キャンパス駅」徒歩 約2分

駐車場

あり(ららぽーと柏の葉共用駐車場)

お支払い

各種クレジットカード対応
アニコム・アイペット清算対応

血液透析治療に関するご相談は、事前にお電話でご予約ください。詳しい検査結果をお持ちの場合はご持参いただけますと、より詳細なご説明が可能です。

アクセスマップ